2020年9月3日木曜日

【お知らせ】2020年9月1日の報告3:原告準備書面(2)の裏づけとなる元研究員原告の陳述書を提出。

2020年9月1日に、原告から「組織共用性」について原告主張を全面展開した準備書面(2)の裏づけとなる元研究員の原告の以下の陳述書を提出しました(PDFは->本文 別紙参考資料)。
 
同じく、研究者木暮一啓東大名誉教授も同様、意見書(5)を提出しましたが、その詳細は->こちらの記事。 


  **************




陳述書
原告 大庭有二
(略歴)
昭和22年1月生まれ
昭和40年 立教大学 理学部化学科入学
昭和44年 同卒業
昭和44年 東京工業大学 大学院入学 (工学部 印写工学研究施設に配属)
昭和50年 東京工業大学 大学院終了 工学博士取得 
昭和50年 日本電電公社 電気通信研究所 入社 (武蔵野研究所 画像部に配属)
平成10年 同 退職
平成10年 通信放送機構 研究員就任
平成12年 同 退職
平成12年 高崎健康福祉大学 教授就任
平成19年 同 退職
平成19年 自営業者となり現在に至る

はじめに
大学で化学科を専攻した私は、大学3年生から実習実験が開始され、その際に担当教官から実験ノートの書き方について説明を受けました。その趣旨は繰り返し実験を行っても再現性がえられるように注意深く実験条件やデータを記述するようにと指示されました。 これにより実験の信頼性が確保されるからです。
その後、就職した日本電電公社の研究所でも、このやり方で実験ノートを作成し、学生以来20年以上にわたり実験ノートを作成してきました。
以下では、実験ノートの共用に関する私の経験と実験ノート作成の経験のない人が実験ノートについてしばしば陥る誤解について述べたいと思います。

1.実験ノートについて
(1)、被告の準備書面(2)の主張
被告の準備書面(2)の 4ページ5行目には「実験ノートをどのように活用すべきかあるいは実験ノートに何が記載されるべきかについては研究機関ごとにあるいは研究者ごとに異なるのであり原告が主張するような一律的・画一的な問題ではない」と記載があります。
この記載は被告代理人が被告から得た情報を基に作成した表現であり、実験を経験してきた者にとっては実験ノートの存在を誤解していると強く感じるものです。それを具体的に述べますと、被告代理人は実験ノートを学校の講義において学生が取る講義ノートであるかのように誤解しているのではないかと推察しています。
学校の授業の多くは教科書等があった上で講義がなされ、その内容を確実に理解し、覚えるための補足手段として講義内容の一部やエッセンスを講義ノートに記述するのが普通です。つまり学校における講義ノートは講義を確実に自分のものにするためのあくまでも補助手段であり、分かっている事は詳しく記述しないのが普通です。ですから、ノートは講義の全体を必ずしも記述していないのが一般的です。
しかし、先端的な研究や実験(以後、単に実験とする)では先行する論文や報告が存在することがあるものの、多くの実験はその手順などを示す実験指針や教科書があるわけではありません。そのため実験には試行錯誤が否応なしに伴い、その試行錯誤の中から目標に向かう道を見出す必要があります。そのため、そこでは横道に入ったり、後戻りをしたりすることが避けられません。そうした試行錯誤の作業の中で、それまでのジグザグの経緯を完全に振返ることの出来る記録が実験ノートであり、そこに書いてある内容と実験者の記憶が研究の全容なのです。
これをもう少し分かりやすいと思われる比喩で説明をすると、私は、裁判における審理内容は当事者の主張と証拠や証言などの記述が全てだと思っています。そこには裁判の内容を示す教科書があるわけではないので、審理内容の記録がその裁判の全貌のはずです。
つまり、研究における実験の全貌は裁判における審理内容の記録と同様に実験ノートが全てを記述しています。 もちろん実験ノートでは裁判における審理内容の記述とは異なり、研究者に特有の色々な省略が存在します。その例として、繰り返して使用する実験環境や実験手法や測定器などは、どこかにその記載があることが分かっていれば、暗黙の了解として実験ノートに記載しないのが普通です。さらに得られた結果についてもコンピューターなどにファイルとして保存をしている場合があり、こうした場合はそのファイルがどこに存在するかをノートに記載しておき、 そのデータをわざわざプリントアウトして実験ノートに貼り付けたりせずに、紐付けだけをして管理することがあります。こうした省力化は研究を効率化するために当たり前のことであり、それらのうちの何を省略するかは研究者ごとに異なります。その省略の仕方に研究者の個性があり、実験ノートの書き方が研究者ごとに異なることになります。 しかし、実験ノートに記述してある内容は研究者間でそれほど大きな違いはなく、それが証拠に記述しなかった暗黙の了解や紐付けした情報をあえて実験ノートに記載し直し、更に研究者独特の記述癖についての補足を入れれば、実験の全貌が誰にでも分かる実験ノートとなり、同一の実験に対してどの研究者でもほぼ同じ内容の実験情報がそこには記載されている実験ノートになるはずです。
いみじくも、被告の準備書面(2)12ページ1行目から2行目にかけて「自らかが後日具体的に実験内容をトレースできるようにするために作成していた」とありますが、このトレースは記憶がかなり薄れているであろう10年後、20年後にでもトレースが可能な情報を実験ノートに記述してある事を意味しています。
言いかえると、授業における講義ノートは例え無くしてしまっても、教科書を読み直したり、知人のノートを見せてもらうなど、色々と代替手段が存在します。しかし、実験ノートはそれを無くしてしまえば、残っているものはそのエッセンスを整理して上司等に報告した報告書等だけになり、実験の全容を理解することができなくなるのです。極端な比喩であるが、裁判において審理内容の記録を消失してしまい、全容が不明の裁判になってしまうようなものだと思います。
以上から、被告の準備書面(2)4ページ5行目の「実験ノートをどのように活用すべきかあるいは実験ノートに何が記載されるべきかについては研究機関ごとにあるいは研究者ごとに異なるのであり原告が主張するような一律的・画一的な問題ではない」との主張は、実際に研究で実験をしたことのない代理人が被告の助言と表面的に見える実験ノートの記述内容見ての印象を述べているだけだと言わざるを得ません。

(2)、実験の種類と実験ノートの記載内容について
上述の説明には実験ノートに記載される内容の具体性がないため、次に実験ノートの記載内容について少し詳しい説明を付け加えたいと思います。
  実験や研究には本実験、予備実験、準備作業などがあり、それらの実施に伴い、成功データ、失敗データ、重複データ、不要データなどが得られ、その実験条件を含む詳細が実験ノートに記載されます。もちろん、先に説明したように暗黙の省略や紐づけによる省略が多々あるため、表面的には詳細に記載されているようには見えない場合があります。
1.1 本実験:  成果報告や対外発表などの主要データを得る実験や研究であるが、その実験を実行する前に予備実験や準備作業をしばしば行うことがあります。
1.2.予備実験: 労力や資金が大量に必要とされる本実験を成功裏に終らせるために、実験環境の確認、材料の選定、実験条件の決定などをするために小規模実験で試すことが多い。この際に得られるデータは本実験の一部として使用できるレベルであることもあるし、精度が低く使用できないレベルであったり、データを十分に取らない場合もあります。
1.3.準備作業: 実験装置や実験材料の入手や作製、それ等の精度や純度の向上のための作業などがあります。
これらのうち、本実験のデータ等の多くは少なくとも組織内で何らかの報告として露出されます。けれど、予備実験については例え詳細なデータがあっても実験者が組織内で報告や周知をしないことがありえます。更に、準備作業のレベルになると、データや条件などの詳細について実験ノートに記載することはあっても、組織内で報告をしなかったり、結論だけを共同研究者に伝えることが多くなります。

(3)、実験データ等の評価
次に、データ等の評価付けについて説明します。なお、この評価はかならずしも明示的に行うのではなく、実験者本人が暗に評価していることが多い。
1.4.成功データ: この場合、結果等は内部および外部に対して適宜報告します
1.5.失敗データ: この場合、結果等を内部報告する場合と報告をしない場合があり、報告しても特段の理由が無い限り詳細なデータを用いることは少なくなります。また、このデータ等を外部に報告することは通常はありません。
1.6.重複データ: この場合、検討範囲を拡張した再実験などの場合に過去のデータとの連続性を確認するために行う実験などで重複データが発生し、過去に実施したと同じ実験条件のデータが得られます。そのため、ここで過去のデータとの連続性が確認できれば過去に報告済みとして重複データは報告しないことが多くなります。なお、こうした再実験で過去のデータとの連続性が確保できなかった場合は、その原因を追究する検討や実験を行うことになり、連続性が確保できるまで再々実験等を行うことになります。この経過については内部で報告することが多いですが、重複条件の結果が多くなることもあり、整理した報告書の中では省いてしまうデータが多々発生します。
1.7.不要データ: 実験や検討をしたが、そのデータ等が不要であと判断した場合です。
ただし、不要と判断するのは個人的主観によるものが多く、目的によっては有用データに変わる可能性があります。この場合、実験者は不要データと見なすと実験ノートにデータ等の記載があっても組織内で詳細をほとんど報告しません。

(4)、実験データ等の情報共有
以上のように実験ノートに記載したデータや実験条件などの情報は、日常において、上司や共同研究者などに紙面を使って整理した形で定期的にあるいは半定期的に報告するのが一般的です。しかし、上記(3)で説明しましたように連続性が確保できなかった重複データや不要データ、更に失敗データは、説明が煩雑になるなどの理由で、実験ノートに記載があるにもかかわらずその詳細な情報を上司や共同研究者に報告しないケースが存在します。こうした情報提供はあまりにも過多となることなどがあって、詳細な整理を怠たり、他者への報告をしないなど、実験ノートから実験情報等が全く露出しないことがあります。これは実験者自身や報告を受ける者の研究効率の低下を防ぐために仕方がない事です。
なお、こうした日常的には露出しない実験情報等以外にも実験ノートに埋もれてしまう情報が存在します。その典型例を次に説明します。
報告書や論文にはそれぞれに文脈があり、それに乗れないデータ等は実験ノートには詳細があるにも係らず、放置されることがあります。この主たる原因は、本来は、実験が全て合理的に行えるのではなく、紆余曲折しながら進行する現実があるにもかかわらず、それ等をまとめた報告では、あたかも合理的な実験が進行したかの様に記述して、紆余曲折までは記述しないために生じるのです。
これらの組織内部や外部に報告や露出しないが、実験ノートに記載のある実験情報は実験者個人だけが、その存在を記憶している状況になりがちで、宝の山としての活用ができない状況に通常はなっています。その原因はそれ等を明示的に保存する、あるいは有効に扱う仕組みやノウハウが多くの研究機関に存在しないからです。
かつて米国では先行して発明をした人が発明者として認められる先発明主義の特許制度がありました。この制度では実験ノートの日付と内容が重要な証拠となり、過去に遡ってその記述が先発明の証拠として使われました。この制度により、目的に合わないなどとして研究を中断したり、不要扱いとした実験情報に、日の目が当たる機会がありました。 こうした事があるので、提示も報告されることなく埋もれてしまっていた実験結果やデータを有効に活用する目的で、米国では積極的に実験ノートを管理していました。
これに対して、日本の特許制度は先出願主義を継続維持しているため、特許制度での過去に遡る実験ノートの利用が少なく、その管理を研究者個人に任せたままの歴史が続いてきました。こうした活用の場がない日本では、どうしても失敗や不要と実験者が判断したデータ等は粗末に扱われ、かつ他者に分かりにくい実験ノートの記述や必要以上の省略を問題視しない風潮が存在し、他者が活用しにくい実験ノートとなりやすかったのです。更に、研究を管理する組織側も不備なノートの記述を黙認するとともに、研究者が個人的に失敗や不要と判断し、実験ノートのみに残るデータやその実験情報等も、組織の財産である事の意識を欠如させています。

2.実験ノートの共用経験について
ここまでは実験ノートの記述内容や管理等の一般論を述べてきました。次に実験ノートの複数の者による共用に該当すると思われる個人的な経験を以下に記します。
(1)、実験ノートの記述経験に関する個人的経緯
 大学3年生から実習実験が開始され、その際に担当教官から実験ノートの書き方について説明が行われました。その趣旨は繰り返し実験を行っても再現性がえられるように注意深く実験条件やデータを記述するようにとの指示です。 これにより実験の信頼性が確保されるからです。
この初めての指示の中で、今でも思い出すのは、「化学天秤(テンビン)[1]を使用する際は小数点以下第4位(0.1ミリグラムの桁)の重量まで書きとめる習慣を付けることと、第4位までの値が無い測定記録は使用してはならない」と細かな注意があったことです。
これは試料の重量測定は容器の重さが加わった値を求めることが多いため、容器重量を引いて試料の重量を求める必要があります。その際の計算ミスを防ぐために筆算をノートに書き残す習慣に通じており、ノートに書いた筆算には小数点以下に必ず4桁の数字があることで、引き算の際の小数点の位置間違をしていないことが、筆算を目視するだけで可能です。こうした「第4位までの値が無い測定記録は使用しない」習慣は先輩の知恵の伝承だと思っています。
時代が変わり、容器の重量を自動的に差し引く天秤が普通になったため、筆算の記述を残すことは次第に無くなりましたが、こうした実験ノートの書き方の説明を受けたことで、測定データの有効数字や材料の純度を意識した実験をするともに、それが分かるような記録習慣は持ち続けてきたと思っています。
こうした実験ノートの書き方の細かい指示は教育機関や時代により異なると思われますが、研究者はノートの書き方についてある程度の教育を受け、それを踏襲している人が多いのではないかと推定しています。

しかし、これまでの説明だけでは実験ノートのイメージが不確かだと思われるため、参考として、ネット上に公開されている「実験ノートの書き方」の例を紹介します。これでなくてはならにとは言えませんが、ほぼ妥当と思われる内容です。

「実験ノートの書き方」

また、ネット上に公開されている実験ノートのサンプルを2つ、陳述書の末尾に参考資料2として添付します。

 

なお、以下に述べる実験とは、実在物を使って行ういわゆる実験だけではなく、机上検討や理論解析や実験のための準備作業なども含まれる広義な研究を意味して使用しています。

(2)、研究報告で疑義・紛糾が生じる場合に情報不足を補完する実験ノート
電気通信研究所では6つの研究室で研究を行った経験がありますが、いずれの研究室でも一週間に1度または月に1~2度の進捗状況報告を研究室全員又は小グループ単位で行うことが定例でした。
こうした日常的な状況報告はグループ等の管理者が個々の研究者の研究状況を把握するためにも、また研究者間での意見交換や情報交換、更にはアドバイスを受けるためにも有効であり、多くの研究組織で行っているはずです。
その際、各自の報告時間が5分から10分と限られたため、要領よく研究状況の報告をする必要があり、その手助けとして研究内容を要約してまとめた資料を作成し全員に配布するのが通例でした。この資料を基に研究状況を報告し、更に次の報告までにどのように研究を進めるか方針を明らかにし、そこで交わされた研究者間での意見交換やアドバイスも参考として、研究を継続していました。
 ところで、この中で、ときたま研究報告に対して疑義が生じ、紛糾する場合がありました。このような場合、要約にまとめた資料では情報不足となるため、そうした際には実験ノートを手元に置いて自分で見ながら詳細な検討を行っていました。 そのため、ほとんどの研究者は実験ノートを状況報告に持参して、そうした事態への迅速な対応を心がけていました。

(3)、実験に失敗や矛盾が生じる場合、実験を振返る手段としての実験ノートの活用
 研究にはしばしば不適切なデータしか得られない失敗実験や先行する実験データと整合性が取れない実験があります。 こうしたことの原因追求は同じ過ちを繰り返さないために大切であり、場合により新たな知見が得られたりすることもあります。
こうした問題の解決方法には大まかには2通りあります。その一つは実験ノートの見直しであり、他の1つは再実験の実施です。
実験ノートの見直しは、再実験の実施に比べると、時間的にも経費的にも効率的です。他方、再実験は時間的にも経費的にも非効率であるため、まずは実験ノートの見直しをしてから再実験を決断するのが一般的です。
しかし、再実験に際して時間的制約や経費的制約があるため、その制約を取り払う、或は軽減するために上司を説得する必要がある場合は、実験ノートを含めたあらゆる資料を使って説明をします。特に別の研究に携わる研究者等の協力を得て再実験を行う必要が生じた場合は、通常では報告の対象にならない実験ノートに記録された時間経過や作業手順などの詳細説明を交えて、お願いする協力期間や担当過程などを説明して、その合理性を上司や協力者に説明しなくてはならなくなります。こうした場合には、実験ノートの他者への直接開示がどうしても必要となります。
私自身、これに関する個人的な経験としては、協力者の立場に立ったことがあります。しかし、協力依頼者になったことはありませんでした。
更に、実験ノートを共有した個人的経験を付け加えます。
次の(4)実験ノートの引継ぎで述べる先輩と行った共同研究では、私が研究を離脱して実験ノートを譲渡した後に、先輩から質問を受けたことがありました。その概要は自分が行った実験と先輩の行った実験のデータの不整合であったと記憶しています。その際に先輩に渡した私の実験ノートを使って実験内容を説明し、少し議論をしました。この説明と議論により不整合の原因が明らかになり、感謝された経験があります。

(4)、実験ノートの引継ぎ
 大学院の修士課程において配属された研究室の指導教授から、研究室に慣れることを一つの目的として、先輩の研究者の実験を手伝うように指示されました。
先輩は彼の行ってきた実験の発展系を私に示し、期待される成果が得られるであろう方針を示してくださった。その方針に従って実験を行い、実験ノートを作成しました。この一連の研究は先輩を助ける形で二人だけで行っていたため、経過や結果は実験ノートを直接示して先輩に高頻度で報告し、次の展開を話し合って決めていました。
 その共同研究を半年程継続しましたが、私はその研究から自分独自のテーマを見つけ出すことができず、指導教授から新たなテーマを与えられのたで、そちらの研究に変更しました。
それまでの間に作成した実験ノートは先輩が後日行うであろう研究発表の基礎資料の一部となるため、先輩からの要請もありノートを譲渡しました。
これは一種の実験担当者の交代であり、一般的にあり得る例としては実験助手として雇用されているテクニシャンと呼ばれる人たちが行う実験です。 彼らの研究は期間限定であり、長期にわたる研究ではその一部の期間を担当する研究者と言えます。期間が到来すると、そうした方々の成果は実験ノートとして残され、研究者に引き渡されます。研究者の研究成果の集大成として論文や研究報告となって公化することになりますが、その際に個々の期間を担当したテクニシャンの作成した実験ノートが活用されることになるのです。

(5)、ノウハウの伝授
  私の大学院生としての研究の時に、高分子の薄膜に種々の物質を含有させ、その特性を主に光学的に測定することを行っていた時期がありました。 薄膜はガラス基板上に薄い溶液化した部材を均一に塗布して、 乾燥した薄膜を形成して、 それをガラス基板から剥離して目的の高分子薄膜を得ていたのです。しかし、高分子薄膜がガラス基板に固着して剥がすことが不能になる事がしばしばありました。こうした場合に 別の溶剤を塗布して薄膜を膨潤させ剥離しやすくする方法があります。この時に溶剤が不適当であると高分子薄膜が溶解してしまい膜が得られなくなったり、逆に固着したままで剥がすことができないことがしばしばあります。 こうした時にどのような溶剤を使用するかを先輩が自分の実験ノートを使って試料の作製方法を説明してくれたことがあります。 そのノートには溶剤の組み合わせと最終的に得られた薄膜のサンプルが貼り付けてあった記憶があります。このノートには成功例だけでなく、失敗例が記載されてあり、これにより何をすることにより、どの様な試料が得られるか判りました。これは同じ研究室の人は先輩からいつでも伝授してもらえた情報でしたが、外部には公表する内容ではないため研究室内の一部の研究者のノウハウとして存存在していました。こうしたノウハウの伝授として先輩の実験ノートを使用したことがありました。

以上、陳述します。

2020年8月30日


                         大 庭  有 二




[1] その意味はこの陳述書の末尾に添付した参考資料1を参照。




0 件のコメント:

コメントを投稿