以下、準備書面(1)の全文です。そのPDFは-->こちら
木暮教授の証人尋問申請の書面は-->こちら
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平成30年(行コ)第91号 法人文書不開示処分取消請求控訴事件
控訴人 レペタ・ローレンス
被控訴人 国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構
控訴人準備書面(1)
2018年 6月 7日
東京高等裁判所第14民事部 御中
控訴人訴訟代理人 弁護士 古 本 晴 英
同 弁護士 柳原 敏夫
同 弁護士 神 山 美智子
同 弁護士 船 江 莉 佳
目 次
1、書証の提出
当審において、以下の2つの書証を提出する。
①.木暮意見書(4)(甲68)
実験ノートの作成・利用・保存の実態及び抗菌活性実験・耐病性評価実験の実施者は誰か等について、原審において3通の意見書(甲6・同7・同64)を作成・提出した木暮一啓東京大学教授((以下、木暮教授という)が、原判決の事実認定に対する意見を述べた意見書(4)を作成したので提出する。
その趣旨は、木暮教授が《これまで30年余り、第一線の研究者として世界とやりとりをしてきており、学術の世界の国内外の潮流を完全に理解し、活動してきた》観点からいわば「学術研究の常識」に沿って作成し提出した意見書に対して、原判決は《何等かの形で検討された形跡が全く見られない》という驚きについてであり、
そこで、再度、木暮教授が確信する「学術研究の常識」に沿って、本研究プロジェクトにおける抗菌活性実験・耐病性評価実験(以下、総称して本実験という)の実施者は誰か及び実験ノートの作成・利用・保存の実態について検討した時、原判決の本実験の事実認定及び「組織共用文書」該当性の判断は経験則に違反し到底維持できないものであることを明らかにしたものである。
木暮意見書(4)が指摘した「学術研究の常識」の問題を法的に言えば、
第1に、本実験の事実認定及び「組織共用文書」に適用する具体的事実の認定において適用すべき「学術研究の常識」とは何か、言い換えると特殊専門的な経験則とは何かという問題であり、
第2に、本実験の事実認定及び「組織共用文書」に適用する具体的事実の認定に当該特殊専門的な経験則を正しく適用した場合いかなる結果となるかという問題である。
第1に、本実験の事実認定及び「組織共用文書」に適用する具体的事実の認定において適用すべき「学術研究の常識」とは何か、言い換えると特殊専門的な経験則とは何かという問題であり、
第2に、本実験の事実認定及び「組織共用文書」に適用する具体的事実の認定に当該特殊専門的な経験則を正しく適用した場合いかなる結果となるかという問題である。
②.論文「Mitotic progression following DNAdamage enables pattern recognition within micronuclei」(nature〔2017年8月24日Vol.548〕掲載。甲69)
近時のnatureやCellといった一流誌の論文では、文末のAuthor Contributions(著者の貢献)の欄に、共著者のうち誰が何を分担したのかを明記することになっている。それによれば、単に「実験材料を提供」又は「実験方法・評価方法を指導・伝授」にとどまる者は特別な場合を除いて共著者にはなれず、Acknowledgement(謝辞)の欄に記載される。それは、原審で甲84木暮意見書(3)でも次のように述べた通りであるが、
《菌など実験の材料の提供者は、例えばその菌が世界で初めて分離したもの、あるいは他の株には見られないような特殊な性質を持っている、あるいは提供者が作りだした特有の性質を示す遺伝的変異体、といった”特殊性を作りだした提供者”以外は、論文の共著者として名前は載らず、謝辞でその旨を述べるのが普通です。》(3頁2~6行目)
今般、その実例として、natureの論文(甲69)を提出する。前記論文の文末のAuthor Contributions(著者の貢献)には、イニシャルで誰が何をしたか明示されており、誰が研究を立案したか、誰が論文を実際に執筆したか、誰がどの実験を行い、どのデータ(どの図表)を出したか分担役割が示されている。他方、Acknowledgement(謝辞)には、研究に協力してくれた人、実験材料を供与してくれた人、資金提供元などに対する感謝が述べられるが、この人たちは論文の著者にはならない。これが科学界のスタンダードすなわち「学術研究の常識」である。
2、人証の申出
もとより、本件で問題になる経験則とは日常的な経験則ではなく、自然科学の特殊専門的な学識経験に属する経験則である。そのため、標準的裁判官が知っていることを期待できず、本件の特殊専門的な経験則の存在についてはこれを証明する必要がある。
この特殊専門的な経験則について、控訴人は控訴理由書で、原判決の誤りとして次の経験則違反を指摘した。
①.事実問題として、原判決の事実認定が経験則に違反すること。
①.事実問題として、原判決の事実認定が経験則に違反すること。
すなわち、平八重らは本実験を実施したかという事実認定において適用すべき特殊専門的な経験則の内容を正しく認定していないこと、及び当該特殊専門的な経験則を本実験の事実認定に正しく適用しなかったこと。
②.法律問題として、原判決の「組織共用文書」該当性の判断が経験則に違反すること。
すなわち、「組織共用文書」に適用すべき具体的事実の認定において適用すべき特殊専門的な経験則の内容を正しく認定していないこと、及び当該特殊専門的な経験則を具体的事実の認定に正しく適用しなかったこと。
そこで、当審においては、上記①及び②の事実認定において適用すべき特殊専門的な経験則の内容とは何か及び当該特殊専門的な経験則を上記事実認定に正しく適用するといかなる結果となるかを証明する必要がある。この立証のために、原判決が採用した特殊専門的な経験則の誤りを指摘し、正しい特殊専門的な経験則とは何かを意見書(4)で示した木暮教授から法廷で直接、知見を確認することが必要かつ有益である。そこで、今般、木暮教授の証人尋問を申請した次第である。
以 上