2019年8月21日水曜日

【速報】第三次実験ノート情報公開事件の提訴(2019.8.21)

本日8月21日、これまで2度にわたって行ってきた、遺伝子組換えイネの実験の生データを記録した実験ノートの開示請求に対する農研機構の全部不開示決定の取消を求める裁判に続き、3度目の裁判の提訴を東京地裁に行いました。訴状は末尾に紹介。PDFは->こちら

当日、記者クラブに送った提訴の詳細情報を以下に転載します。 

 実験ノート裁判への支援・協力のお願い(その詳細は->こちら

現状を率直に申し上げます。今回の第三次提訴の裁判費用のため、カンパが底をつきました。皆様から千円でもよいので、以下の口座までカンパいただけたら第三次裁判を継続することが可能となります。
ご支援・ご協力をどうぞよろしくお願いいたします。

銀行 東京三菱UFJ銀行
支店 広尾支店
名義 動的平衡基金 代表 神山美智子
種別 普通預金

口座番号 0198271

    ***************

21世紀の世界の行方を決める科学技術事故に対するシビリアンコントロールを正面から問うた
           第三次バイオ実験ノート情報公開事件、本日提訴


1、裁判の当事者
原告:大庭有二(小田原市在住の市民)
被告:国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構

2、提訴までの経緯
2005年と2006年、国(独立行政法人)は、新潟県上越市で、多くの住民の反対を押し切って、日本で最初の遺伝子組換えイネの野外実験を強行しました。





多くの住民がこの野外実験に反対した最大の理由は、この遺伝子組換えイネはディフェンシン耐性菌という人類と地球環境に大変な危険をもたらす可能性を持つ新たな生物を生み出すからです。住民は、この野外実験の中止を求めて、そしてこの野外実験の危険性を明らかにするために、裁判を起こしました(裁判の公式HP->禁断の科学裁判


その裁判で、多くの問題点が明らかにされましたが、被告(独立行政法人)は最後まで、この実験の核心部分を決して明らかにしようとしませんでした。

他方、かつて法廷で傍聴人のメモ解禁を勝ち取った人権弁護士ローレンス・レペタさんはこの危険な遺伝子組換えイネの実験に関心を抱き、2007年、国(独立行政法人)に対し、この実験データを記録した実験ノートの情報開示の請求を行いましたが、「実験ノートを私物である」という理由で情報公開を拒否されました。そこで、この処分の取消しを求めて2012年提訴しました(第一次訴訟)。
第一次と第二次訴訟で本筋と無関係な脇筋の理由で敗訴し、今回、本命の本筋で勝負する第三次訴訟を提訴するに至りました。
今回の特徴は、本年2月、被告(独立行政法人)が2012年4月以降のバイオ実験で作成した実験ノートを私物ではなく、公開の対象となる法人文書と初めて認めたことです。その結果、同じバイオの実験で実験データを記録した実験ノートが片や私物であり、片や法人文書であるとなり、それが不合理なのは明らかです。今回の提訴では、この矛盾を追及し、2012年以前のバイオ実験の実験ノートの情報公開を勝ち取る所存です。

2011年3月の原発事故は、私たちがもはや科学技術に対する神話(信頼)の中で生きていけないことを思い切り私たちの頭に叩き込みました。ではどうしたらよいのか、その対策は依然模索中です――その解決の鍵は主権者である私たち市民の手にあり、科学技術事故に対し市民が監視し、チェックする(科学技術事故に対するシビリアンコントロール)、ここに立ち帰るしか過酷な科学技術事故を防ぐ手立てはない。そう確信する市民が起こしたのが今回の科学技術の生データを記録した実験ノートの情報公開裁判です。
いま、私たちは、科学技術事故に対するシビリアンコントロールが成功するかどうかが、21世紀の人類が生き延びられるかどうかを決める決め手になるという崖っぷちに立たされています。このことを自覚して、そのシビリアンコントロールのささやかな挑戦の1つを本日の提訴でスタートさせます。
(これまでの実験ノート裁判の詳細はhttp://disclosure-labnote.blogspot.com/ 参照下さい)。

 連絡先:原告代理人 弁護士 柳原敏夫
                     武藤総合法律事務所
                          TEL  03(6268) 5880
携帯 ‥‥

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訴    状



2019年8月21日

 東京地方裁判所 御 中

      原告ら訴訟代理人弁護士    古   本   晴   英
              同      神   山   美 智 子
              同      船   江   莉   佳
              同      柳   原   敏   夫

〒250-0045 神奈川県小田原市‥‥
              原  告   大   庭    有   二
   〒102-0083 東京都千代田区麹町2-2 VORT半蔵門Ⅱ3階
           麹町国際法律事務所(送達場所)
             電 話 ‥‥
             FAX ‥‥
      上記原告訴訟代理人 弁 護 士   古   本   晴   英
〒106-0045 東京都港区麻布十番4-4-1ツイン一の橋2028
神山法律事務所
電 話 ‥‥
FAX ‥‥
同       弁護士  神  山   美  智  子
   〒160-0004 東京都新宿区四谷2-13-27 KC四谷ビル2階
             ホクレア法律事務所
             電 話  ‥‥
                 FAX   ‥‥
        同       弁護士 船   江    莉   佳
   〒100-0006 東京都千代田区有楽町1-7-1
有楽町電気ビルヂング北館5階512・513・514区
武藤綜合法律事務所
             電 話 ‥‥
             FAX ‥‥
同     弁 護 士   柳   原   敏   夫
   〒305-8517 茨城県つくば市観音台3-1-1
              被  告   国立研究開発法人農業・食品産業
                     技術総合研究機構
              代表者理事長 久   間   和   生         
   (処分をした行政庁の表示および送達先)
              同  上


法人文書不開示処分取消請求事件
 訴訟物の価額    金160万円
 貼用印紙額   金1万3000円


第1 請求の趣旨
 1 被告が原告に対し2019年4月23日付でした法人文書不開示処分を取消す
 2 訴訟費用は被告の負担とする
  との裁判を求める。

第2 請求の原因
 1 本件不開示処分の存在
(1)原告は、2019年3月28日、被告に対し、独立行政法人等の保有する情報公開に関する法律(以下、「法」という)に基づき、別紙請求文書目録1記載の「実験に関する実験ノート、或いは実験野帳、フィールドノート、実験記録、実験日誌、研究ノート、ラボノート、ラボラトリー記録、業務日誌、実験ファイル、実験ホルダーなどその他名称のいかんを問わず実験により得られた生データ(raw data)及び実験条件を記録したすべての書類(アナログデータ及びデジタルデータ)。」(以下、「実験ノート」という)の開示を請求した(甲1。法人文書開示請求書控)。

(2)被告は、2019年4月23日付「法人文書の開示をしない旨の決定について」(甲2。以下「本件処分」という)により、原告が開示を求めた法人文書を全部不開示とした。    
原告は、同決定を同月24日頃に受領した。
法人文書の不開示理由は、法人文書に掲げる実験ノートについて、組織共用性が認められず、法人文書と認められないことを理由として全部不開示とした。
2 不開示処分の違法性
  他方、これに先立って、原告が、2019年1月22日、被告に対し、法に基づき、別紙請求文書目録2記載の実験ノートの開示を請求した(甲3。法人文書開示請求書控)のに対し、被告は、2019年2月18日付「法人文書の開示をしない旨の決定について」(甲4。以下「本件関連処分」という)により、原告が開示を求めた法人文書を全部不開示としたが、その不開示理由は、法人文書に掲げる実験ノートについて、組織共用性を認め法人文書と認められるとした上で、法第5条第4号ホの不開示事由に該当することを理由としたものである。すなわち、被告は被告職員が職務の中で被告の実験施設を使用して実施された実験において作成した実験ノートについて、一方ではこれが組織共用性を認めて法人文書であることを認めながら、他方では組織共用性を認めず法人文書であることを否定するという相反する判断を下している。この点も含め、上記決定の法人文書が全部不開示とされた判断は、法の解釈、適用を誤ったもので違法である。

 3 結語
   よって、原告は本件処分についての取消しを求めて本訴に及ぶ次第である。


証 拠 方 法

1 甲第1号証   2019年3月28日付法人文書開示請求書控
2 甲第2号証   2019年4月23日付法人文書の開示をしない旨の決定について(通知)
3 甲第3号証   2019年1月22日付法人文書開示請求書控
4 甲第4号証   2019年2月18日付法人文書の開示をしない旨の決定について(通知)
 

付 属 書 類

1 甲号証写し          各1通
2 証拠説明書(1)         2通
3 代表者事項証明書      1通
4 訴訟委任状          1通
以 上


請 求 文 書 目 録 1



本件情報公開請求日までに実施された下記の実験に関する実験ノート、或いは実験野帳、フィールドノート、実験記録、実験日誌、研究ノート、ラボノート、ラボラトリー記録、業務日誌、実験ファイル、実験ホルダーなどその他名称のいかんを問わず実験により得られた生データ(raw data)及び実験条件を記録したすべての書類(アナログデータ及びデジタルデータ)。
1998年より開始されたディフェンシン遺伝子を導入した組換えイネ系統の開発(作成、調製、作出を含む)及びその検証に関する実験のうち、抗菌活性実験[1]または耐病性評価実験[2](論文「抗菌蛋白質ディフェンシンの多様な機能特性」(「化学と生物」Vol.43 NO4) 231頁左段3行目以下記載の実験、平成19年1月4日受付論文「大腸菌で発現させたカラシナ由来ディフェンシン(Bj-AFP1)の抗菌活性」(中央農研研究報告)に記載の実験、特開2003-88379号公報4枚目の図3及び4に実験結果が示された実験及び貴法人ホームページの「中央農業総合研究センター 2003年の成果情報」中の記事「我が国独自の組換え技術を統合した複合病害抵抗性組換えイネの作出法」[3]に記載の実験を含む)
以 上


請 求 文 書 目 録 2



下記の2つの研究の中で、2012年4月3日から本件情報開示請求日までに実施された実験に関する実験ノート、或いは実験野帳、フィールドノート、実験記録、実験日誌、研究ノート、ラボノート、ラボラトリー記録、業務日誌、実験ファイル、実験ホルダーなどその他名称のいかんを問わず実験により得られた生データ(raw data)及び実験条件を記録したすべての書類(アナログデータ及びデジタルデータ)。
1、 2014年3月12日に農研機構のホームページ(※1)に公開されたプレスリリース「平成26年度遺伝子組換えイネ栽培実験について」で紹介された「カルビンサイクル強化イネ」の開発および栽培の研究
(※1
http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/press/laboratory/nics/051255.html
2、2018年4月6日発行の農研機構のホームページ(※2)に公開されたプレスリリース「(お知らせ) 平成30年度シンク能改変イネの第一種使用等による栽培に関する実験計画書の公表及び説明会の開催」で紹介された「シンク能改変イネ」の開発(栽培実験計画書に記載された2015年実施のアグロバクテリウム法による遺伝子導入実験及び2016年実施の閉鎖系温室にて生物多様性影響調査で実施された実験も含む)および栽培の研究
(※2
http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/press/laboratory/nias/080450.html


以 上









[1] タンパク質ディフェンシンそのものが様々な病原菌に対して増殖を抑制する効果があるかを検証する実験をいう。
[2] ディフェンシンの遺伝子を組み込んだ組換えイネを栽培したものが様々な病原菌に対して増殖を抑制する効果があるかを検証する実験をいう。

[3] URLhttp://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/narc/2003/narc03-09.html

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